12/5 色んなスピッツと、あなたや私を「見っけ」るツアー。武蔵野の森総合スポーツプラザ公演感想と一部レポ
スピッツ「見っけ(MIKKE)」ツアー、武蔵野森の総合スポーツプラザ、略してムサプラ(とマサムネさんが言っていた)初日。
12月のド平日ですが、行ってきましたよ。
…楽しかった………
ここ数日はライブで聴けた「あの曲」たちを繰り返し聴いたり思わず口ずさんだりしている。
今も、Siriに「スピッツの◯◯かけて」なんて声かけてこれを書いたりして かぶれています。
電気を暗くするだけであの照明のゆらめきが再生されたらいいのにな。
急いで撮った。
新しい地図のファンミ以来、2度目まして。
事前情報はほとんど耳に入れず、しかしセトリが「やばい」噂は知っていた。
いったいどんなセットリストなのか、と思っていたのだが、確かにこれは……
やばい!
どなたかのツイートで「これは単なるアルバムツアーじゃない」的な話を見たけれど、その意味が割とすぐに分かるし、「分かる」のレベルがどんどん本編で更新される。
確かにアルバムツアーだけど、2019年に発売された素晴らしいアルバムのツアーだけど、
それだけじゃない。
15年近くファンをやってて良かったなあと思える、じんわり来るセットリストだった。
はっきり言って、誰もが来たほうがいい。
とてもネタバレしたいがそれはいけない。
あの衝撃を味わってほしい。
(いやセトリ変えてくるかもしれないですけど)
少なくとも、新しいファン、昔からのファン、いろんな人が満足するのではないかな。
ひとつのアルバムを起点に、豪華なこんにちは、ありがとう、久しぶり、が顔を見せてくれるというのか。
とにかくいろんなスピッツを「見っけ」られるし、何なら私は途中でびっくりしすぎて倒れそうになってしまった(リアクションが大きい)。
そう、「ある曲」のイントロが流れた瞬間に時が止まり、力が抜け、なにもかも投げ出してその世界に漬かりたくなり(嬉しいとリアクションが大きい)、リアルに一緒にいた人に体重を預けかける事案が発生した。ごめん。
だってまさかあの曲、ここでやります?
照明もほんとうに美しくて。あの曲の世界観を体現した、幻想的な。
「光に包まれる」とはああいう状態を指すのだと思う。
今回まさかの4階席で発券時にも別の種類の驚きがあったが、あの世界は、私の中では遠くからがちょうどよかった。
上から見下ろしたキラキラに包まれ、全身で光を浴びて、幸せになってしまった。
というか涙を流し、よろよろした。
不審者。不審者を生み出すスピッツの楽曲。
いやあ、もう一回行きたいなあ……………。
純粋なアルバムツアーに行けたの、実は相当久しぶりなのだ。
30周年ツアーやゴースカやフェスでは観ているのだが、なぜだか分からないが、私、「醒めない」ツアーに参加していない。
単にチケットが取れなかったのもあるが、それはファンクラブでの申し込みを忘れたのがいちばんの要因と言えた。
ファンクラブに入るほど好きなのに、申し込みを忘れるなんてあるのだろうか?
それが実際は あるのだった。
長く好きでいると、好きなものが増えすぎると、プライベートでいろいろなことがありすぎると、
「当たり前に甘えてしまう時期」や、「エンタメを楽しめない後ろめたさ」みたいなものにとらわれる時期がある。
それはまた機会があれば詳しく話すけれど。
アルバムの1曲目『見っけ』の印象的な歌詞を思い浮かべる。
「再会へ!」
うん。確かにたくさんの「再会」ができた気がしている。
それは曲だけではなくて、自分の歴史とも。
スピッツを通しての、過去や生活の確認作業。
年末っていろんな人に会いたくなるけど、このライブも「そう」だったのだろうか?と錯覚するぐらい
なんだか泣けてしまった。
ずっと節目節目で会えているけどさ─
世の中が慌しくなる12月の平日、
あんなに大勢の人が予定や仕事を切り上げ、同じ場所に集まり、
ステージには変わらないスピッツのメンバーがいて、「皆さん、平日のお忙しい中、スピッツのために時間を割いてくださりありがとうございます」なんていくつになっても腰が低い挨拶をする。そうかと思えば突然「楽しい時間にします」とカッコいい誓いを立てたりする。
いろいろなことが確かに、奇跡みたいだなと。
メンバーのコンディションも素晴らしく(ツアー始まりたては本人たちも話すようにある種の「カタさ」はあるけれども、その空気感がライブの中で「整っていく」瞬間がある。それが楽しい)、
草野マサムネのボーカルは精巧だが時に感情的で、喉からCD音源という表現だけでは済ませられない凄みを感じさせる。やっぱりこれは、「生」なのだ、と。
奇跡とか幸せとか、こちらこそだよ。
そんなクサい台詞を難なく口にしたくなる魔法の夜。
あ、奇跡とか幸せとかはライブでスピッツのメンバーが発した言葉でして、
それがほんとうに本心にしか聞こえなかったから「こちらこそです」となっている。
リーダー田村氏は「誰も欠けずにこうしてバンドを続けられている」ことを奇跡みたいなものと語り、
ボーカル草野マサムネは「中学生の時に、バンドいいなあ、いつか俺もやりたいなあ、と思っていた自分からすると、今のこの状況ってほんとに幸せなこと」とかみしめるように感謝する。
奇跡はあなたたちが私たちに見せてくれているわけだし、
その幸せな空間はあなたたちが作り上げたものなので「こちらこそだよ」なのだが、
彼らは「それは聴いてくれる人観てくれる人がいるからこそ」と言うのだろうし、たぶん、永遠に決着がつかない感謝の連鎖だ。
まあ、きっとファンはバンドの性質に似る部分もあるから(?)、
お互いに謙虚なんですよ。
毎回謙虚同士の対面みたいな気持ちになるスピッツのライブ。
この謙虚な対面を、まだまだ、できるだけ長く、続けていたい。
☆
モニターに映るメンバーの横顔を見ながら、
18歳で繰り返し繰り返し、スピッツのPV(当時はMVなんて言葉はなかった、たぶん)とライブ映像を食い入るように見続けていた自分の姿を思った。
当時のスピッツは、今の私とたぶん同世代。
「こんな素敵な35歳、36歳いる?」
なんて日記にも書いていたっけ。
真夜中の四角い画面越しの世界。
ハヤブサに収録されている某曲のPVを観ながら、いつかこの曲がライブで聴けるだろうか?と夢を見ていた。
「そうか。スピッツが続いていく限り、私の未来にはずっと『未来のスピッツ』がいてくれるのか」
10年ほど前にそう気づき、本気で「スピッツと歳を重ねていけることに感謝」した瞬間があったのだが、今回も同じような気持ちを抱いた。
ステージに立っている人たちとファンの関係性を恋のように語るつもりはないが、
秀でた才能ある方たちが「好きなことをやり続けてくれる」「居続けてくれる」おかげで自分の感情や人生が豊かになるって
夢じゃなくて絶対にあってしまうし、
それって、とてもラッキーだなと思うのだ。
「おじさんになると話が長いんですよね」
「こんなおじさんバンドだけど」
「テレビでジャニーズの子と並ぶと、俺ら厳しくない(笑)?」
「画素数も上がっているわけだしね」
「みんな膝は大事にしましょうね」
随所に清々しいアラフィフトークを挟む彼らだが、
モニターに映る横顔や笑顔を見ると、とてもその年齢には思えないよ……と突っ込みを入れたくなるし、でもたしかに、
彼らはもう、私が最も狂ったように映像を見続けていた頃の、30代のスピッツではない。
私もあの頃と、まったく同じ自分ではない。
それでも「そのまま」な部分はある。
それがなんだか 嬉しいのだ。
そのまま歳を重ねてくれたのだね、と
壮大な物語に参加させてもらっている気分にもなる。
大げさかもしれないし勘違いかもしれないけれど、
スピッツのメンバーは年齢の変化を楽しんでいるようにすら思えるのはなぜなのだろうなあ。
抗うことなく変化というイベントを受け入れることで、知らない自分を見っけていく。
おじさんトークで客席と距離を縮める彼らを見ながら、変化は悲観しすぎるものではないのだな、と妙な確信を得た。
変化はその年代にならないと分からない。
私にはまだ分からない。
でも生きている限り必ず分かち合えるものでもあるわけだから、
また少し、強くなれる。
☆
歳を重ねてきて思うことは、
いろんな年代や環境の違いをいつでも「理解していたい」し「想像していたい」ということ。
共存したいんだ。
スピッツのメンバーが大御所ぶらず、というかただの純粋さで、さまざまな若手バンドの音楽を公平に聴き、惚れ込んだり刺激を受けていることは知っている。
それをずっと見てきたからなのかは分からないが、私も年代や環境や背景の違いに限らず、まずは「聴いて(聞いて)みたり」「話してみたり」することを日常の中で大事にしている。
そして、そういうことを忘れないこの生活が
そんな自分の気質が、結構好きだ。
私にとってライブに行くことは、
きっと、生きていく上で拾いたい感情を「見っけ」ることと同じなのかもしれない。
音源を聴いているだけでは生まれない、その場で生まれる気づきや答えがたくさんあるのだ。
遠くから眺めた彼らの姿とギリギリでたゆたう世界に、懐かしくも新しい発見をもらった─今っぽく言わせてもらえば、「エモい」「激エモ」な夜であった。
「エモさ」ってさ、いくつになっても感じられるんだよ。
むしろ、過去や思い出が増える「これから」のほうが。
☆
今回、同行者の仕事がありえないほどに多忙すぎたようで、開演数時間前まで来るか来られないかのギリギリの攻防戦が繰り広げられていた。
来られればいいなあ、とずっと願っていたが、どうしても都合がつかないことはある。
念のため「譲ります」の文章をスマートフォンの下書きに保存しいつでもSNSに流せるようにはしていたが、それはただの保険で、どこか「大丈夫」だとも感じていた。
だから無責任に「がんばれ」と言い続けた。きっと相当な圧だったと思う。
そうして数時間後の私たちは、同じ場所で美しく揺れる照明の光を浴びることに成功していた。
その人のスピッツ好きを知っているがゆえに本当に良かったなと素直に思うし、調整してくれたこと、感謝している。
何よりあのセットリストは逃してはいけないのだから、ね。
生きてきた環境が違っても、それぞれの場所で「おんなじ音楽」を聴いてきた人たちが無数に存在しているのは、
知っている名前の星を探すことに少し似ている。
共有できるプラネタリウムのスイッチを、知らない間に押していく。
音楽の素晴らしい一面をまた一つ見っけられた、そんな気がした。
奇跡は日常の中で生まれていくのだ。
【おまけ】
曲のネタバレはしないけど、衣装と覚えていたいMCの話を少し。
・マサムネさんは最近定番化しつつあるハット
・会場が調布の近くということで、上京仕立てでお世話になった調布での思い出を語るマサムネさん。東京に来たばかりで知り合いもいない、でもひとりで部屋にいるのは寂しい、と、調布駅近くのマクドナルドでコーヒーを買って文庫本を読んでいたと言う。想像したら絵になるわあ。
・「その頃を思うと、今、こんなにたくさんの人に見てもらえて……夢みたいです。笑」
・その少し後に田村さんと出会う。
・田村さん、いつも以上に跳んでいる。めっちゃ元気で安心する。
・エゴサの話。
田「この前スピッツの歌詞についてのハッシュタグ※ができてて…」※ #衝撃を受けたスピッツの歌詞
草「え……こわ」
私(え、そうなのか)
一緒にいた人(そうそう、数日前に突然トレンド入りしてた)
私(まじか)
田「歌詞が一行書いてあるだけなんだけど。あ、別に草野の性癖とかは明かされてないよ?ww」
草(笑いながら訝しげ)
会場(とりあえず笑うしかない)
田「例えば『本当は犬なのにサムライのつもり』とか。」
草「そうなの?で、こういうところが変態、とか続けて書いてたり……(拗ねるように)?」
田「違う違うw」
私(変態と思われる認識はしているのか…褒め言葉なんだけどねえ)
田「スピッツがインディーズのときにさ、『マムシの歌』ってのがあったじゃない。ロックバンドでマムシか、すごいなあ、と。」
草「あれは…学校の近くでマムシが出るから気をつけてくださいねって校長先生が言ってたのを歌にしただけですよ…?」
田「だからもうね、『僕のペニスケース』とかじゃあ驚かないわけですよ……(会場若干ザワる)どんな歌詞でももう…」
草「…田植えの季節、とかね…?笑」
私(巧妙にケースから話題を逸らした─?)
・田村さんスピッツの歌詞大好き問題
田「(タグを見て)改めてスピッツの歌詞ってやっぱすごいなあって思ったね」
草「…そう?他にも色んなすごい歌詞書くバンド、ありますけどね?」
田「いや!やっぱりスピッツはすごいって!」
草「…!ありがとうございます笑 バンド内で褒めあってますね…」
私(純粋すぎもほどほどにしてくれ…ほんわかしちゃうだろ…)
・テッちゃん、U2のライブに行くの巻
「昨日U2のライブに行ってきたんですよ。若いつもりで、スタンディングの席を買ってね。そしたらヤバかったね……めっちゃくちゃ疲れるの!笑」
「俺ら今こうして立ってるじゃん、あ、田村は座ってるけど(MC時に捌ける)。ギター持って立ってるときは平気なんだけどね。何もしてないで立ってるのはダメだった……」
「みんなも無理しないで座ったりしてね」
メンバー共通で「おじさんになると話が長いから」「座って休んで大丈夫ですよ」「今この時間、トイレとか行っても平気だよ」と休息を促す体に優しいロックバンド、それがスピッツです。
・ちなみに過去、MC時に捌けた田村さんがあるメニューを爆速で食べているのが見えました。今も食べているのだろうか…
・流れは曖昧だけど奇跡のワードちりばめ
田「50代になってもバンドやってるって思ってなかったです笑」
草「もっとこうね、弾き語り的なのは想像ついたかもしれないですけど、ロックバンド─」
田「なんかね、奇跡みたいなものだなって思ってます」
会場(心を掴まれる)
田「ひとりの逮捕者もなく続けてこられて─」
会場(笑うしかない)
テ「うん……でも、それが普通なんじゃ─?」
会場(ご も っ と も )
テッちゃんって「人は結局見た目による?そんなわけない。それこそ人によるんだよ」を体現してくれている日本代表だと思っている。
こんなに繊細でまっとうで物静かな奇抜な人もいるのです。派手な人みんなが怪しげなクラブで闇ウェイしているとは思わないでほしいのだぜ。
(ちなみに私の母親はピアスや髭を生やす男性に割と厳しいが、テツヤ氏に関しては「テッちゃんはOK。テッちゃんはあのままがいい」と特例を設けているほどの信頼を置いている)
・みんなの癒し、崎ちゃんはバーテン
「(ニコニコしながら)最近知ったんですけど、付き合ってはいけない男の3Bってのがあるらしくて─」
私(あ、そ、それは…!)
一緒にいた人(笑ってる)
崎「美容師。バーテンダー。…バンドマン……」
(メンバー笑う)
崎「しかも僕の今日の服装、若干バーテンダーみたいだし。笑」
たぶんマサムネ「ほんとだ。笑 3つのBのうちの2つを持つ……」
この日の崎ちゃんは白シャツの上に黒いベストを合わせていた。
似合うけど確かにバーテンっぽさがあり、こんなマスターがいたら通うだろうなという邪念が頭をかすめていた。
・オシャレな崎ちゃん
「そういえばベストよく着るよね」のメンバーの問いに
「好きなんですよ。ドラマーって下がほとんど映らないんで、上半身で勝負っていうか。笑」
このくだり一番癒された。崎ちゃんはバンドの平和の象徴だな。これからは崎ちゃんの上半身ファッションに注目しよう。
マサムネさんも「そんな理由が」的に納得していた。
以上、総じて優しく平和でカッコよく、芯の通ったバンド活動と音楽とメンバー愛が垣間見えるMC一部(ニュアンス含む)を現場からお届けしました。
☆
さて今頃は武蔵野森、2日目かあ。いいなあ。
行かれた方々の感想と高揚感のダダ漏れを楽しみに、今宵もスマートフォンでセットリストを追う長い余韻に浸ります。