【ネタバレ注意】エヴァ世代、女、シン・エヴァ感想日記
(ここのブログを更新せずかなりの時が経ってしまったけれども、ナチュラルに再開させるかもしれない。読者登録してくださっている方、ありがとう。不定期すぎてごめんなさい。)
シン・エヴァを観たある日の感想。
今回は一度しか映画館に行けなかった。
上映期間内にもう一度観たかった気持ちもあるけれど、初見で感じたことをそのまましばらく大事にできる経験もまた いいのかもしれない。
ゴリゴリネタバレあるので注意してもらえればと思う。
なぜか冒頭のあらすじだけで泣きそうになり、その後の10分ぐらいで涙が出た。
特にストーリーが動き出したわけでもない時点でクライマックスになったかと思うほどの満足感。なんでだ。
正直に明かしておくと、私は前の映画の内容(映画館で3回も観たのに)も、アニメシリーズの内容もすべてをばっちり覚えているとは到底言えないダメな視聴者である。
それでも、それでも涙が出てしまうのだ。
最初に観たときの「同世代」感が忘れられないのは大きいのかもしれない。一緒のスタートラインだったのに、エヴァはここで一旦終わってしまうのだから。
究極に考えればシンジやみんなの成長物語、父親のねがいは厨二病という感じではあったけれども(ほんとうにただの主観です)、それでも感動的だった。
訳の分からない箇所があってもエヴァに関してはぶっちゃけ、それでもいいと思っている。
言い方を変えれば勉強不足の怠慢であるが、結局人生だって世界だって「よく分からない」ことばかりだし、それが当たり前でいいはずだとも。
途中までシンジは声も発さないからどうすればいいのかなと、緒方さんと緒方さんのファンへ想いを馳せていたが心配無用だった。
最後もかっこよかったなあ。このシリーズで初めてシンジ推しになったかもしれない。
自信を受け入れた人間はそのままで輝きはじめる。
「加持リョウジ」にはびっくりするしかなかった。このキャラクターの続きが見られないと思うと、正直勿体ないけれど。
ミサトさんと「彼」にもまだまだいてほしかったが、なぜだろうあまり悲しくはない。
そう、悲しいシーンがあまり悲しくないのが今回のエヴァだったように思う。
なんでだろうね。自分の人生を生きようとしている、からだろうか。誰もが。
マリとシンジの関係性がここまで濃いものになるとも思っていなかった。なんとなくノルウェイの森の緑を思い出す。物語の途中からやってきた生の象徴とでもいうのか。
出会いと成長は高い確率で一部のなにかを変えてしまうから、アスカもレイも自分の場所を見つけるように、シンジも大人になってしまう。
みんな気がついて、成長を受け入れてしまう。
切ないような嬉しいような、そして、私は一体何を「変えられた」のか、この20数年で?
そんな気持ちにもさせられた。
とにかく、前向きさを感じられるラストはいいね。あとトウジたちにもびっくりした。幸せに。
深夜、眠らない部屋のテレビから流れるエヴァ(おそらく再放送)に夢中になった14歳の頃。真っ暗の部屋の中で何話も何話ものめり込んでいたっけ。
何がそこまで中学生だった私を惹きつけたのかは正直覚えていないけれども、同世代だった彼らがしっかり大人になる過程を、大人になって見届ける未来があるとは もちろん当時は思っていなかった。これも庵野秀明さんのおかげ。
それなのに、庵野秀明とは碇ゲンドウだったのかな、それともシンジそのものだったのかな、となんとなく思っている私を許してほしい。
もちろん、それほど影響力があるという意味なのだけれど。
エンドロール、最後のクレジット。
絶対にどんなことがあってもゆっくり彼の名前が登場し、観ているすべての者に存在を焼き付けてハッとさせて終わると当然思っていたがその通りだった。むしろ、これを観ないとシン・エヴァもエヴァも完結しないとさえ思った。それもやはりゲンドウちっくだった。
あの瞬間私は、エヴァの夢の中にいたこれまでと、30代の現実を生きるこれから、体験前後の気分を少しだけ味わっていた。
果たしてどこまで同じでいられるかということ。
なんつー感想で締めるのかという感じだが、彼の思考の具現化、形にできるプロフェッショナルチームのおかげで、「たったの8年ちょっと」で物語の続きを目撃することができた。
確実に観て良かったと思える、映画館で観るべき作品に携わってくださったすべての方に
「ありがとう」を贈らせてください。
そして忘れてはいけない。
世界を変える庵野秀明クレジットともしかしたら同じぐらい、この曲なしのエンドロールは成立しなかった。
序の頃は─どうしてもテレビシリーズの面影で、あの世界観とは別の声や音楽が「入ってくる」ことにまだ慣れない自分がいた。
今は、ここが新しくたどり着いた場所だ、と思う。
宇多田ヒカルの声は切ない。全身から慈しむような、誠実な切なさを感じる。
それは悲しさだけでは終わらない。
今より私が幼かった頃は気がつかなかった。
憂いと切なさを帯びた声を美しい旋律にのせて、哀しみを編んで、優しい手ざわりに変えてくれる。
この作品にぴったりと、はまる。
だから涙が出るのだろう。
ジャケットも、これ以上はないのではないかな。
凛とした優しさ、懐かしいのに初めて会うみたいな気持ちにさせてくれる。
体に取り込んで、
世界が色づいていく。
映画の中身もエンドロールも音楽も振り返ってしまったな。どうしようか。
ほんとうはいつまでもここにいたいけれども、
「行こう!」
あの聞き慣れない彼の強い声が教えてくれた。
さあ行こうか、私たちも。
変わることを受け入れてくれる現実の夏を、
生きていくんだ。