北海道旅にっき(0.5) きっかけは札幌とスピッツと。
「北海道 旅行 9月」
「北海道 きたえーる」
ある夏の朝のコンビニエンスストアで、私は焦りながら検索していた。
きっかけはその数分前のちょっとしたサプライズに遡る。
(再生:数分前)
「スピッツ…北海道…残ってる……!?」
スピッツのファンになり約15年、ファンクラブ入会から10年以上。
その日は彼らの結成30周年ツアーのチケットがいくつか一般発売する日だった。
7月からスタートしているこのツアー。大阪公演には遠征旅行で参加できたものの、私は諸事情(期限までにお金を払い損ねました…)で関東のチケットを入手できていなかった。
スピッツのチケットは、元々ファンクラブに入っていても取るのが難しいことがあるほど(むしろ近年余計に取りにくくなっている実感があるのですが皆さんどうでしょうか…?)入手が困難なのだが、ライブのことならフットワークの軽さとあきらめの悪い自覚があり、この日はダメ元でロッピーの機械からチケット争奪戦に参加するつもりだった。
(なんと過去の武道館チケットはロッピーで取った実績がある。運が良かったのだろうけど。)
しかし今回は読みが甘かった。
着いたら既にロッピーの前に先客がいらっしゃった。
ああー、ちょっと遅く行き過ぎたか。
そしてなんとなく予感はしたけれど、その方の画面には「スピッツ武道館」と書いてあった。
「あ、私もスピッツです」
思わず話しかけていた。
そこは(しまった、またチケットを取れる確率が遠のいた…10時ぴったりから挑戦できないのは可能性ゼロに等しい…)ともっと悔しがるべきなのかもしれないけれど、「こんな地元にスピッツのファンが」という事実にちょっと嬉しくもなるのだった。
ちなみに以前、同じような場面にエレカシ野音のチケ取りで遭遇したことがある。私より先にロッピーの前で待機していた男性の先の画面に「エレファントカシマシ」の文字を見つけたときの気持ちを思い出す。
(こんな地元にエビバデが…!地元のダンナが…!)←エレカシファン向けのネタです
勝手に熱くなりながら列に並んだ。そのときは残念ながら男性も私も入手できなかったのだけど、エレカシ野音もロッピーで取れた経験があるので完全に希望がないわけではないのだよ。希望がある限り、私はやるんだ…!
さて話を戻して、発売時間まであと数分。
もうこの2番目の順番では取れないことが分かっていながらも、何らかの「もしも」のためにロッピーに並ぶ私と、真剣にスタンバイをしている目の前の女性。
せめてその女性だけでも取れたらいい…
私は手元のスマートフォンでチケットサイトを複数開きながらその時間に備える。
並んでいた女性は、どうしても武道館のある日の公演に行きたいらしい。家の都合でその日しか行けるタイミングがないのだそうだ。
ただ、横浜アリーナのチケット*は取れていたようだったので少し羨ましくなる。
武道館は本当にプラチナチケットだよね。いつからそんなことに…
私の今回の狙いも一応武道館、そして第2希望は横浜アリーナ。
大阪遠征に一緒に行った母(スピッツ好き歴は母のほうが先輩)が、久々のスピッツライブの長い余韻に浸りながら「大阪楽しかったな〜。マサムネかわいかったな〜。また旅行行きたいな」「またライブ観たいな、武道館も行きたいなあ」「誕生日(8/16)に武道館、いいなあ」とどう考えても私宛のひとりごとを口にしたことが今回のチケ取り参戦の大きな理由だった。
(私も観たいし母も観たいのなら、チケ取り頑張ってみるかあ)
武道館は当たる気がしなかったため、ファンクラブでは横アリを申し込んでいた(支払い忘れてごめんよ…)。
その後「一応ダメ元で」と申し込んだチケットサイトの先行抽選も外れた。
ならばあとは、一般に望みをかけるしかないのだった。
武道館がだめでも、横浜アリーナならもしかしたら一般でも取れるのでは…なんて期待もあった。距離的にも争奪戦のハードルが下がるかもしれないし、もし取れたら母もなんだかんだで行くと思うし。希望は捨てずに捨てずに。
そしてついに発売時刻の10時!
目の前の女性、めっちゃ頑張って画面をタッチ。
私、それを見つつスマホの画面をタッチ。
ただ気のせいかな、既に目の前の女性の画面には「完売しました」と記載されているような…
いやいや見間違いかもしれない…まだ20秒ぐらいだもんね…
なんて思っているうちに、チケットサイトには「予定枚数終了」の文字。
えええええ!?あああああ!?
や…やっぱりか………!?
この間、3分も経っていません。
文字に起こせる展開がほぼ何もないまま、とにかくあっという間にロッピー端末もチケットサイトも予定枚数を終了したらしい。
はあー………やっぱりか。
これチケット取り挑戦に慣れている方なら分かるかもと思うけど、本当に立ち会うたびにマジか?と脱力してしまう。うう。
スピッツ、甘くない。
「だめでした…ごめんなさい時間かかっちゃって」
「いえいえ…!」
何度タッチしても状況が変わらないことを確認し、がっかりした様子で女性がロッピーから去っていく。
あああ…でも、横浜アリーナがあるではないですか…その日を全力で楽しんで…!
背中に向かって語りかけた私だった。
私が見ても結果は当然変わらないのだけれど、一応画面を確認してみる。
武道館の全日程、横浜アリーナの全日程、うん、全て「×」。予定枚数終了。
「すごいな…スピッツ、あなたって人たちは………本当にどんどんチケットが取りにくく…」
予想はしていたものの、スピッツの人気の高さというか高すぎるだろ!な展開にちょっと嬉しくもあり、しかしやはりちょっと切なくなりながら とりあえず店内のイートインコーナーで朝ごはんを食べた。
決してもう切り替えたわけではないけれど、腹が減ってはアレなので。
もぐもぐと「もちもち系チーズパン」を食べながら、
(そうだ、どうせなら他の公演の販売状況も全部見てみよう)と思い立ち、またロッピーの画面をタッチしてみた。
この時点では単なる「ほらやっぱりどこも完売。すごいなスピッツの人気は……」と再確認する作業だったのだけど、数分後に予想外の展開が起こる。
「ここも完売、ここも完売と。あ、香川はあるな。けど……この時期か…(割と直近だった)なかなか難しいし、そもそも香川に行くのは結構たいへんだよな……他はやっぱり軒並み完売か……ん?」
「北海道 △」
おお!?
北海道、あるの!?
思わず△の記号をタッチ。
9月16日と17日。三連休の時期と重なる。
きたえーるという場所で開催されるらしい。
今のところ、どちらも△。
私のその時期の予定は◯である。
ていうかロッピーの画面、いったんどちらかの日程が×になってまた△に復活した瞬間を見た気もするけれど、私の記憶違いかもしれないので断定はしないでおく。
北海道か……北海道、きたえーる…?
北海道だとやっぱり結構遠いからみんな断念するのかな…?
いや、でもこれたぶん、偶然というか…たぶん、いずれ×になるのでは…?
どのチケットも取れなかったファンが、後日、この△を見つけたら?
念のためその場でチケットサイトの状況を確認すると、なんとどのサービスを見ても、北海道、既に完売。みんな本気だ。
ロッピーが残っているの、ラッキーなのかな?
どうやら北海道はこのタイミングで追加席を販売していたらしい。ということは、一度は完売になった公演の、追加席販売の最後の△が、このロッピーというわけなのか…?
あれれ?私、やっぱりラッキーな瞬間に立ち会っているのかな……?
でも北海道…北海道……きたえーる…?
さすがに遠いかな…
△は見なかったことにしようかな…
でも、武道館も横浜アリーナも取れなかった今、私と母に残された最後のスピッツ30th参戦の希望……
………
……………
………………………
いくつかの迷いを抱えつつ、とりあえず「申し込む」をタッチした。
支払い用のレシートをイートインのカウンターにそっと置く。
そう、しばらくその場で考えればいいのだ。チーズパンの残りを食べながら、引き換え期限の30分以内に結論を出すんだ。
本当に北海道まで行くのか。
行きたいのか、行く必要があるのか、行く勇気はあるのか…おいしいものがあることは知っているけど…しばらく行く予定はなかったからなあ…っていうかそもそも、母は行けるのか。
念のため5分後にまたロッピーを操作してみると、やはりか。
北海道、両日ともに×マークに変わっていた。
わずか3、4分のラストチャンスだったのか…
てことは、てことは。このレシートを引き換えなければ、もう北海道のチケットすら自力で手に入るチャンスは少なくなる……?
でも…9月の北海道ってどうなのだ?天候は?気温は?混雑状況は?飛行機の空きは?費用は?
10年以上前に一度いとこの結婚式で行って以来、北海道には足を運んだことはなかった。
おいしいものがたくさんありそうなことは、知っている。おみやげでもらって以来、六花亭の雪やこんこが大好きだ。
でも私は、それ以外のことをほとんど知らない。
そもそも、きたえーるってどこ…?
いくらなんでも少し事前に調べる必要があるな…
と、ここで冒頭の検索シーンに戻るわけです。
「北海道 旅行 9月」
「北海道 きたえーる」
その他にもいろいろなワードで調べたけど、そのとき分かった情報は
・9月はまだ寒すぎない。観光客は夏より落ち着いて旅行にも割と適していそう
・ちょっと高いかもしれないけど、今からでも飛行機の席は取れそう
・探せばいろんなパックのプランがありそうだ(あるのは当たり前なのだが、決断までの時間の猶予がないのでとにかく焦っていた)
・きたえーるは札幌駅から乗り継いですぐ行けそう
・やっぱりおいしいものがたくさんありそう
ということ。
なるほど。旅行のシーズンとしても交通の便もあまり問題はなさそうだ。おいしいものもたくさん食べられそうだし。
そしてチケットは今や完売という事実が私を後押しする。
もしこのチケットを引き換えたあとに北海道行きが困難になっても、完売しているチケットなら譲れる確率は高くなる。何ならもし譲り手が見つからなかった場合、結婚式に出席したいとこの家族にプレゼントしたっていいかもしれない。
「私が行けなくなってもチケットもお金も無駄にはならない」
その事実をほぼ確信したのです。
結果、どうなったかはお分かりですね。
引き換え期限の時間を過ぎることなく、レシートをただの紙切れにすることなく、私はレジに向かっていたのでした。
って、取っちゃったよ北海道!
遠征は割とよくしているとはいえ、北海道は経験ないよ!
行けるのか、本当に…!
チケットが取れた嬉しさと、本当に行けるのかという不安がごちゃまぜになっていた。
そして、母に言わなければならない。
母が行けないとなったら、ひとり旅をするかあるいは2枚ともどなたかに譲るしかない。
まあでも、棚ぼたで取れたようなチケットだ。
もし行けなくても、チケットが取れず歯がゆい思いをしているファンはたくさんいるのだから その方々にお譲りできるのなら気持ちも楽になるし…うんうん…
【LINE】
私「武道館も横アリも即完売。残っていたのは北海道と香川。北海道は9月17日。悩んで一応取っちゃったけど、くるみちゃん(愛犬)のごはんとかもあるしやっぱりチケットは誰かに譲るかね。」
母「北海道の、どこなの?」
私「きたえーるってとこ。札幌からも行けるらしいよ」
母「パパの休み次第だね。」
あれ?思った以上に普通に行く気かな??
その後も状況と情報をいくつか説明。
数時間後の母「北海道、パパ休みで家にいるって。OK出ました〜」
軽っ!!!
母、フットワーク軽っ!!!
もっとこう、「え?北海道!?遠征しすぎじゃない?何考えているの?もっとやるべきことが云々…」
みたいな反応があるかもと思っていたのだが…
〜リフレイン〜
「大阪楽しかったな〜。マサムネかわいかったな〜。また旅行行きたいな」
そうだった。母は私の母だった。
というか実は、母はかなりの北海道旅行の先輩でもある。私がなぜか大阪にそこそこ頻繁に行くように、母はなぜか北海道にそこそこ頻繁に行っていた。実姉が北海道にいるのもあるかもしれないけれど、現地に何度も行ったことのある存在は心強い。
本人的には「北海道、この前も行ったけど…」という感は否めないようだが、そこは、ね。また新しい北海道を発見できるかもしれないですからね。
これが北海道へ行くことになった経緯。旅行レポの前に語りたくなってしまったので0.5で。
次回の(1)は、スピッツレポの予定。メモ書きレベルになるかな。どうかな。
(昨日の新しい地図発見により更新遅れたけど、その前に書いていた記事でした。)
*横浜アリーナのチケットにまつわる話と後日談
横アリのチケット、無事ファンクラブで取れたのに支払い損ねてしまう→モバイルサイトから抽選申し込み→予想外に第2希望の大阪が当たり、せっかくなので大阪に行く→一般で武道館と共にチャレンジするが取れず、代わりに北海道が取れる→もう関東の参戦はあきらめて遠征に絞る
…こんな経緯だったのですが、なんと横アリ直前になり以前もこの日記に登場させた某人物から救いの手があり運良く参加することができました。そう、その人物もまた、かなりのスピッツファンなのであった。某人物、マジ感謝。